天の川あふぎのかぜにくもはれてそらすみわたるかささぎの橋
和漢朗詠集 元輔
「銀河を渡るカササギ号の物語」その4
雨があがったようですね?
ふと気がつくとあたりが静かです。
「あれ?雨あがったようだよ」
「えっ、空は?」
夜目で見えません。けれどもさわやかな風を感じます。
「うん、星が出ているみたい」
「出ているよ。雲はたくさん残っているけれど、きれぎれに天の川が見える」
一番、目の利くカササギが申しました。
「じゃ、行こうか」
「うん、行こう」
カササギは、隊列を組んで夜空に飛び出しました。
上空高く上がると、遠くに薄明が見えます。
「ああ、夜が明けそうだよ」
「まだ、間に合うさ」
空気は乾燥していましたけれど、風はまだ強い。
天の川が見えたり見えなかったりします。
とにかく飛ばなくちゃ、そう思いますが、
高度をかせいでいる間にも、日の光で天の川は薄らいでいくのでした。
「織女はどこ?」
「牽牛は?」
必死で雲間を覗きますが、わかりません。雲に隠れているようです。
「こんな高いところまで来てしまった」
カササギはそう思います。
こんな高いところまで来るのは、大陸を横断する渡り鳥くらいのものです。