「月とその仲間の物語」その5
ボイジャー


太陽系を飛び出した虫は一直線にアルファ・ケンタウリへと向かいました。
アルファ・ケンタウリの恒星系では、故郷で見たのとは違う、
不思議なもの達がおりましたが、
彼らは惑星の外へ飛び出す事が出来ませんでしたので、
ひとしきり惑星たちにあいさつをしたのち、まっすぐ通り過ぎてしまいました。
そのまま、シリウス、プロキオンなど訪れましたが、どこも似たようなものでした。

「だれかいないかな...?」

気の遠くなるような、長い、長い時間が過ぎて、
虫は銀河系の端っこまでやってきてしまいました。
その辺りでは、風景があんまりにも違っていました。
後方には輝く恒星が無数にあるというのに、
前を見ると真っ暗闇だったのでした。
よくみると、しかし、完全な暗黒というわけでもありません。
ずーっと、遠くの方にかすかな光が見えます。
おそらくお隣の銀河、アンドロメダ星雲だろう...。
虫はそう思いました。
それにしてもなんて遠い!

「ぼくはどこへ行こうとしているんだろう?」

虫は一瞬躊躇しました。
ほんの数ミリセコンドだけ、故郷の太陽を振り返って見たい欲望にかられました。
でも、今更後戻りできない事もわかっていたので、
小さな声で「アディオス」とつぶやいて、
猛スピードで見慣れた銀河を飛び出しました。

「いつか、あすこにたどり着く日が来るんだろうか?」

あんまり長い時間のように思われたので、もう考える事が出来ませんでした。

「でも、いつかきっとたどり着くんだろうな...」

完全な真空中を、光速に近い速さで飛びながら、
小さな虫はぼんやりとそんなことを思っていたのでした。

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銀河、恒星系の配置に関する表現は、現実のそれとは違うかもしれません。調べるのがめんどくさいので、適当です。あしからず。
ボイジャー、太陽系の外に飛び出して行っちゃったんですよねー、ちょっと前。それが、すごいなーと思ってたんですが...。
ダ・ヴィンチ乗せてますからねー。
文中、太陽のコロナの活発化に伴なうオーロラ観測の事実は、新聞記事によるものです。ボイジャー、太陽系飛び出して行っちゃったのかどうか?実は未確認なんだけど、交信できる距離を飛び出して行っちゃったという新聞記事を読んだ記憶があります。冥王星だか、天王星だかの写真を送ってきたのを最後に、通信が途絶えました。いつだったっけー?去年か、一昨年か?そのくらい、昔。
と言っておきながら、それはパイオニアーのことだったかなぁ?とも実は思っています。なにもかもあやふや。