水の歴史

§2002.4.2§




伊予の松山兄妹心中
兄は二十(はたち)でその名はキヨシ
(いもと)十九でその名はおチヨ
兄は二階で英語の勉強
(いもと)座敷でお針の稽古

ある日妹(いもと)は2階へあがり
もうし兄さまご病気いかが
わしの病気はゆえある病気
医者も看病も薬もいらぬ
いとしお前とひとはだあげりゃ
わしの病気はたちまち治る

きいて妹(いもと)はびっくり仰天
もうし兄さま何云わしゃんす
人に聞かれりゃ畜生(ちきしょう)と云われ
親に聞かれりゃ勘当せらる
わたしゃ似合いの男がござる

道後湯の坂笛吹いて渡る
もうし兄さまこの虚無僧を
殺してくれれば思いのままよ
殺してくれれば思いのままよ

そこで妹(いもと)は座敷へおりて
下に着たるが白ちりめんで
上に着たるが黒ちりめんで
一尺八寸尺八もって
夜の松山流して歩く
夜の松山流して歩く

伊予の松山夜はふけわたり
おりから聞こえる尺八の音

ぱっときらめく刃(やいば)の光
あわれ虚無僧(こむそ)はばったと倒る
ひょいと顔見りゃ妹(いもと)じゃないか
かえす刃(やいば)でのど突き果てる

これぞ松山兄妹心中
これぞ松山兄妹心中


「伊予の松山兄妹心中」


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