水の歴史

§2002.6.13§




少年の日

1.春
野ゆき山ゆき海辺ゆき
真ひるの丘(をか)べ花を籍(し)
つぶら瞳の君ゆゑに
うれいは青し空よりも。

2.夏
影おほき林をたどり
夢ふかき瞳を恋ひ
なやましき真昼の丘べ
さしぐまる赤き花にも。

3.秋
君が瞳はつぶらにて
君が心は知りがたし。
君をはなれて唯(ただ)ひとり
月夜の海に石を投ぐ。

4.冬
君は夜な夜な毛糸編む
銀の編棒にあむ糸は
かぐろなる糸あかき糸
そのラムプ敷き誰(た)がものぞ。


佐藤春夫「少年の日」


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