水の歴史

§2002.6.22§




山林はざわめきゆれ
ももかかえの大木の穴という穴に
鼻に似たる
口に似たる
耳に似たる
枡形に似たる
杯に似たる
臼に似たる
ふかき窪みに似たる
あさき窪みに似たる
風はたぎつ水の音
矢走る音
叱する音
いき吸う音
叫ぶ音
声あげてなく音
くぐもれる音
遠ほえる音
前なるものはふうと唱え
あとなるものはごうと唱える
冷風はさやかに和し
台風は大きく鳴りひびく
どよもす風が吹きすぎたあとは
あらゆる穴がひそやかとなる
みたまえ
樹々は調々とゆらぎ
大木は刀々としてそよぐを


「荘子」


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