恋ふる日は日長きものを今夜だにともしむべしや逢ふべきものを
万葉集
「銀河を渡るカササギ号の物語」その6
特急カササギ号
空は少しづつ明るくなります。
天の川はもうほとんど見えません。
一番先頭のカササギが、大きく旋回しました。
それから羽を大きく広げ、次に少し身を縮めて風切羽を上に向けました。
ターンをきりながら風に乗り、ゆっくりと降下します。
後続のカササギもそれにならいます。
「織女さま、ごめんよ」
「牽牛さま、ごめんよ」
カササギは、そう心の中でつぶやきながら地上へ戻っていきました。
ふと降り返ると、消えかかった天の川の両端にわずかに輝く星が見えました。
「あっ」
今ごろ、見つけてももう遅い。
「さようなら。また来年」
そのとき、天の川を横切るものが見えました。
ぴかぴか点滅しながら織女と牽牛との間に軌跡を描いておりました。
「あれは何?」
「わからない」
「最近、よく見かけるようになったね」
「古老たちは、あれは神さまのお作りになったのもではないと云うよ」
「人間が乗っている?」
「わからない」
織女と牽牛は、その軌跡に応じてかすかにきらめいたかに見えました。
けれども次の瞬間には、
地平線にそって大きな金色の光が筋を描き、
全天が太陽の白い光に満たされていたのでした。