...変哲もない葉、松笠、牛の糞――。 「この干からびた糞の中に生命があるのだよ。この死んだ土塊に拠って生きているものがあるんだ。」バルトークはそう云いながら、杖でそれをかきわけた。そして、心を奪われた者のように熱心に探りながらこう云う。「ごらん、蛆や虫が欲しいものを得るために、小さい穴や通路を作ってはけんめいに働いているだろう。土が浮遊している種子を運んできてここにとどまっているだろう。間もなく薄青い草の芽が出て、生命がこの死の塊に充ち、その周期を完(まっと)うするのだ。以前、このような土塊に小さなリンゴの芽を見つけたことがあるよ。それは生を確信した風情で伸びていた。ずっと昔、ハンガリーにいた時のことだ。今時分はもう実の熟れる時期だろう。が、生命は途につくと同時に踏み潰されることの方が多いのだ。自然は豊かな生命を与えるとともに、同じだけの生命を奪うものなのだから。」