水の歴史

§2002.9.28§




渡り鳥は季節を定め、場所を定めて飛来する。時期の選択は、微妙な自然の変化に合わせて、神秘なまでに厳密である。そしてそこで一定の期間を過ごし、定められた営みを終えると、また遠く識(し)られざる世界に旅立ってゆく。古代の人びとは、その鳥の姿を、遠く霊界に去った先人たちが、時を定めてその産土(うぶすな)の地に帰ってくるのだと考えたのであろう。それで渡り鳥の飛来する水辺は、やがて聖地とされ、そこに先人たちを祀るようになった。


白川 静「文字逍遥」


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